私はこれまで12年以上5社に渡り機械設計、開発、技術に携わってきました。
このページでは、機械設計者が転職するデメリットについて解説します。
テレビやYOUTUBEを見れば転職サービスのCMが流れており「即戦力人材の採用なら◯◯!!!」的なキャッチコピーで溢れかえっている昨今・・・
本当にメリットばかりなのか?
マーケティングに踊らされているだけではないのか?
この辺りについて、実際に口車に乗せられ転職した私の経験を基に述べていきます。
結論、機械設計においてはなかなか難しいのではないか、というのが私の見解です。
- 習得に時間がかかる
- モノが変わると殆ど全て覚え直しで、意外に潰しが効かない
- 会社の規模によって業務の守備範囲が異なる
それでは各詳細です。
習得に時間がかかる
どの仕事でもそうかもしれませんが、初めて行う仕事を一人前にできるようになるまで2〜3年はかかると思います。
新卒は言わずもがな、転職・中途入社でも担当する製品や工法が未経験の場合、習得に時間がかかると思った方が無難です。
既に複数社経験がある諸兄の中には、設計として何社か経験していくうちに経験と知識の蓄積がなされて徐々に短い時間で習得できるようになるような方も居られると思いますが、一旦例外として考えさせてください。
私個人の感覚としては、同じ「機械」とは言えここまで違うものかと毎回吐きそうになりながら仕事をする日々です…笑
下に現職と転職先の業務内容の違いを数値化するマトリックス表を作ってみました。
もし転職を検討している・過去に転職した方がいれば使ってみて下さい。
変化点 | 〇 | △ | × |
材料 | |||
工法 | |||
関連技術 | |||
製品の特徴 | |||
弱点部位や制約の把握 | |||
生産台数 | |||
社内及びサプライヤーとの人間関係 | |||
仕事のツール | |||
現場寄りor事務寄り | |||
職種 | |||
業界 |
現職と比較して同じ・もしくは軽微な変更の場合は〇にチェックを入れます。
どちらでもない場合は△、完全に未経験の場合は×にチェックを入れます。
チェックを入れ終わったら、
〇:1点
△:2点
×:3点
として合計を計算してみてください。
合計点数のイメージは、↓のような感じで差支えありません。
~15点:比較的楽な転職
16~27点:ぼちぼちしんどい転職
28点~:かなりキツイ転職
逆に捉えると、転職先として未経験の分野に飛び込んだ方が知識・経験の幅は広がるといえます。
取り扱い製品が変わると殆ど全て覚え直しで、意外に潰しが効かない
取り扱い製品が異なる会社への転職は、それだけでかなり負荷が高いです。
取り扱い製品が異なるということは、材料・工法・関連技術・弱点部位や制約に関しても高確率で異なる場合が殆どです。
「それなりに設計スキルが溜まってきたな〜。俺って結構仕事できるんじゃね?」なんて思って転職すると後で痛い目をみます。(←私のことです)
機械設計されている方は、殆どが学生時代に機械系の勉強をされてきたかと思います。
そこから実務で揉まれて「この製品だったらこういう設計が壊れず作りやすく安くできる」「不具合が起きたときのメカニズムは◯◯である」などの肌感覚や経験が積まれていきます。
製品が変わると、それら積み上げた経験が自分で思ったよりも使えない事が大半です。
良くて3〜4割、悪くて1〜2割の知識・スキルしか活かせないと思っておいた方が無難です。
図面が読めるとか、表面的な技術用語が理解できるベースがあったとしても厳しいです。
その製品や関連技術で実務経験が無いと「使える知識」「身についた技術」にはなりません。
各社、自社製品やそれに関連する技術に特化しており、さらにその中で担当部署が分かれています。
機械設計全般におけるスペシャリストを目指そうとしても、全ての会社・部署で行なっている業務内容を把握するのに何年かかるのでしょうか…
たまに物凄く優秀な方で「機械設計全般のスペシャリスト」もいるかもしれませんが、凡人だと一生かけてもスキルアップの途中で人生が終わりそうです。(←私のことです)
スキルアップ「だけ」が転職の目的になると、個人的にはキリがなくて心が折れるなぁと思います。
会社の規模によって業務の守備範囲が異なる
大企業だとかなり業務が細分化されており、設計者は設計しかやらない、なんて会社もあります。
組織の規模が小さくなればなるほど、行う業務は多岐にわたる傾向にあります。
実際私が過去に勤めていた中小企業でも、設計業務の他に実験、営業活動、設備の修理、不良品の選別、製品の検査データ作成など、状況に合わせて実施していました。
組織の最小単位は「個人事業主」「フリーランス」となりますが、ここまでくると経理作業も自身で行う必要があります。(税理士にお願いする場合もありますが)
なので「設計や技術しかやりたくないもーん」という方は同じような規模の会社に転職した方が良いかもしれません。
いずれにしても、面接時に業務内容をしっかり確認することが必要になります。
即戦力人材になることは困難を極める
前職と比較して、
- 同じ製品
- 同じ業務
- 同じ会社の規模
となるような転職はあまり無いかと思います。
と言うか、全く同じ製品やサービスを提供していて会社の規模も同じならガチガチの競合です。
転職の目的が就労条件(お金、ワークライフバランス、福利厚生など)改善の場合、達成できない可能性が高いです。
利益率や売上が同等の会社であれば、従業員に対して使えるリソースは限られます。
何か処遇を改善したいのであれば、変化を受け入れる柔軟性と適応能力が必要になります。
それでも転職したい・していい場合
- 被るデメリットより得られるメリットが上回っている
- 自己の業務改善だけで問題解決できない
- このままその職場で働くと身体やメンタルを壊す可能性がある
デメリットよりもメリットの方が強い場合は転職してOKです。
各々事情は様々と思いますが、良くない就労環境で一生を終えるより、動いた方が良い場合もあるでしょう。
収入改善が転職の目的の場合、現在年収から50万円UPくらいまでの比較的少額なオファーは個人的には受けません。
現在の職場で業務改善して評価を得た方が良いです。
なぜなら職位や給与バンドのランクを上げれば容易に到達するラインだからです。
それに、転職に伴うストレスや、転職直後のボーナスが寸志になることによる一時的な収入ダウンなどのリスクと釣り合いません。
個人的には年収100万円UPくらいから検討対象にしています。
また、改善したい物事が自分の力でどうにもならない場合は、転職しか改善策が無い場合があります。
具体的には、問題のある組織文化、特定派遣からの脱却、縮小業界で仕事が無くなる、などが挙げられます。
長時間労働が当たり前で、危険で不衛生な職場はケガや事故に繋がります。
キツいプレッシャーや人間関係から来るストレスでメンタルを壊されると今後の人生が狂います。
転職することも選択肢の一つとして考えると幾分か気が楽になるのではないでしょうか。
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