機械設計者が設計以外へ転職する場合の職種6選

私はこれまで12年以上5社に渡り機械設計、開発、技術に携わってきました。

この記事では、機械設計者が転職・または社内異動するときの選択肢について解説します。

もし設計を辞めたい理由が労働環境や人間関係に起因するものであれば、職種の変更は必須では無いかもしれません。

しかし、機械設計の仕事をしていて「性格的に向いてない」「本当は別の職種で働きたかった」なんて思う方もいらっしゃることでしょう。

一般的に異職種への転職は未経験という扱いのため、収入ダウンが避けられません。

しかし、今までのキャリアを活かして職種を変更する場合、収入は同等以上を狙えます。

下記に挙げる職種は、私が実際にビ◯リーチに登録し企業の人事担当もしくはエージェントからオファーのあった職種です。

  • セールスエンジニア
  • サービス/フィールドエンジニア
  • 実験・評価
  • 解析
  • 生産技術
  • CAD/CAMオペレーター

これらの職種について、実際にカジュアル面談した内容や、過去の職場経験などを交えて解説していきます。

因みに、大企業は比較的職種毎に担当が分かれていますが、中小企業は一人で複数の職種を兼任する傾向にあります。

面接時に募集対象職の業務範囲をよく確認しましょう。

セールスエンジニア

  • 製品やサービスの相談窓口
  • 価格、納期の調整
  • 販売戦略の立案

比較的広い範囲で会社全体の業務を俯瞰しながら、自身の仕事がきるのではないかと思います。

設計職を経てセールスエンジニアとして働く強みは、客先のエンジニアと話をしたときの理解の速さと深さです。

顧客の要求で疑問点がある際も、エンジニア目線で質問ができるので話が早い&その後の社内調整までスムーズに完結できます。

立場としては設計・開発の第一線からは離れ営業色の方が強くなるため、どうしても技術者としての実務スキルが停滞します。

会社や業界により差はありますが、客先との会食や出張の回数は増加するでしょう。

さらに営業スマイルや、ビジネスマナーなどの社会常識に関してもシビアに見られるため、設計とは職業文化が異なります。

セールスエンジニアは、よく言えばマルチプレーヤー、悪く言えば何でも屋です。

この職種の難点は、下手に色々と知っているので顧客の追求から逃げにくいです。

設計経験がない営業なら「分からないんで設計に確認します」が使えます。

下手に技術を知っていると

「ここはこういう風に変更しても問題無いよね?◯◯さん前は設計だったんだし、すぐゴーサイン出してよ。大丈夫でしょ?」

なんて顧客から詰められることもあるでしょう。

設計と営業を両方知らない方が良いこともあります。

技術的な話で見切り発車して後で大爆死しないよう、より一層社内コミュニケーションに気をつけなければなりません。

サービス/フィールドエンジニア

  • 自社製品の保守、修理、不具合対応
  • 新規/交換の際に必要になる部品の設計や資材の準備
  • 営業同行し技術的なサポート

事務仕事や設計も付随業務としてやる場合がありますが、現場対応が本番の仕事と言えます。

不具合があった場合、自社製品のみならず周辺の環境や、取り付く機械などの影響を考慮する必要があります。

そのため、メカの作動原理や製品の使われ方から、何が起きているか読み取らねばなりません。

また、その会社が取扱う製品によって、どこで・どのように・誰と働くか大幅に異なるので、面接時に詳しく確認して下さい。

自社工場がある会社はそこでの作業も想定されますが、客先に行くことも多々あります。

客先では「プロ」として見られるので、業務に慣れるまでそれなりにプレッシャーがキツめです。

その代わり、スムーズに業務をこなせるようになると成長や達成感を得られるでしょう。

設計としてのスキルは、メカに対する知識や不具合の原因追求などでそこそこ活かせる印象です。

今までの職歴で現場経験が無い場合、現場力・体力・筋力に不安が残ります。

もしチャレンジするなら、DIYや筋トレでもして面接時のネタにすると通過率が上がるかもしれません。

出張多めの職種なので、ずっと事務所で缶詰が嫌な人はチャレンジしてみて下さい。

実験/評価

  • 新規開発品の試験、評価
  • 不具合品の再現実験
  • 測定・実験方法の考案

求人により業務内容はまちまちですが、設計と比較すると現場多めの職種になります。

そして、求人の内容によって求められるレベルが大きく異なります。

基準書に則って測定・実験するような仕事の場合、設計でいうところのCADオペレーターと似ているかもしれません。

なので、とにかく早く正確に業務をこなすことを求められます。

もっと仕事に対して要求が高いと、次のような仕事を行うようになります。

  • 新たな製品の実験で、今までのやり方で問題無いか検討を行う
  • 製品の開発上、求められる性能の項目が増加し、新たに測定方法を考案する
  • 得られた実験結果から、設計にフィードバックを行う
  • 今まで行なってきた測定・評価方法の効率化を検討する

その道のスペシャリストになると、製品を通して設計のダメなところが見えてくるようになります。

やはりモノに触れて現場を知っている人は強いです。

解析

  • 顧客から送られた3Dモデルの解析
  • 解析解析前に、条件や設計思想の確認
  • 解析結果を基に、設計へのフィードバック資料の作成

業務内容は比較的設計に近いですが、一言に解析と言っても内容が多種多様です。

  • 応力
  • 振動
  • 流体
  • 電磁波

ざっと調べるだけで、本当に沢山の種類の解析項目があります。(↑に書いた項目は極一部です)

解析ツールは3D-CADに付属しているものから解析専用のソフトウェアまで多種多様で、解析を生業にしている会社は大抵解析専用のソフトを使用しています。

これらの解析ソフトは導入や維持するためのライセンス費用が非常に高額(数十万〜数百万円/年)なため、ハイエンドの3D-CADと同様個人で購入するのは現実的ではありません。

そのため、PCで完結する仕事でありながらサラリーマンという働き方がmustになりそうです。

(フリーソフトもあるようですが、筆者自身も使ったことがないのでどの程度使用に耐えるか分かりません)

解析は評価対象物の製造方法や使われ方をちゃんと理解していないと、適切な結果が得られません。

フィードバックの際、工法的に無理な形状を提案したり、使われ方に沿わない入力条件にするとアウトです。

転職直後は先輩や上司のフォローがあると思うので、客先から大目玉を喰らうことは考えにくいですが…

顧客から送られてくる3Dモデルがそのまま解析できればラッキーです。

複雑な形状の場合メッシュが切れなかったり、ASSYデータで干渉があったりすると、修正したり顧客に確認する必要があります。

また、解析自体の仕組みや理屈を理解しようとするのに、小難しい数式が沢山出てきます。

「微分積分なんて無理!」

「もう忘れたし、これから覚える気力無い!」

こんな人は止めておきましょう。

実務で数式自体をどこまで使うかは正直分かりませんが、数学に強い人の方が後々苦労しないと思われます。

生産技術

  • 工場ラインの構築
  • 各種検討(生産速度、品質、コストなど)
  • 不良品の改善
  • 設備の改造、保守、保全

やることが山のようにあります。

工場にてトラブルがあると、現場に急行です。

製品が上手くラインで流れない、設備トラブルでラインが止まった…

まさしくタイムイズマネー的な状況に遭遇します。

また、安定して製品を供給するために、設備や工程をどのように改善していくか?などのアイディアが出せることも重要です。

↑は個別の最適化となり、レベルアップするとライン毎や工程毎に全体的な最適化が必要になってきます。

こうして、技術的な話に関しては設計職と親和性が高いですが、求められる知識・技能は全く別物です。

生産設備、各種センサー、圧力配管、電気配線など、幅広い知識が求められます。

設備の配置をCADで検討したり、製品の製造のシミュレーションや解析を行ったりもします。

当然現場対応が多く事務仕事だけやりたい人には向いていませんが、PCも使えないとダメです。

これほどマルチスキルが必要な仕事も、そう無いのではないでしょうか。

CAD/CAMオペレーター

  • 設計者のポンチ絵から図面や3Dモデルの作成
  • 顧客から送られてきた3Dモデルを基に製品の試作・製造を行う

よく大企業の試作請負なんかで、この職種の募集があります。

大企業(特に自動車業界)は大抵納期がタイトなので、常にプレッシャーに晒されます。

その上、客先から送られてくる3Dモデルの作り込みが甘かったりして修正や調整が必要になることが多々あります。

依頼を受けた初手で、製造が不可能な部分の潰し込みとフィードバックが必要です。

3D-CADとCAMに対する深い理解力と経験が必要になってきます。

ある種職人に近いので、その道を極めたい人に向いていると言えます。

【まとめ】どの職種でもモノに向き合う姿勢と技術への探究心は必須

設計として築いてきたキャリアを活かそうとすると、どうしても製造業中心の転職活動になりがちです。

需要のある良い製品を顧客に届けることが製造業の存在意義であるならば、どの職種でも基本的にその本質は変わりません。

技術者(機械設計者)として中途採用されるということは、今まで積み上げてきた事を見られるということです。

年齢や職位に見合った働きができないと、転職先で信頼を得たり、職場に馴染むのに時間がかかります。

そうならないよう、今の仕事に真摯に打ち込むことも大切です。

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